きのう錯誤帰属のことを書きながら、
むかし体験したある出来事を思い出しました。
数年前、就職支援の相談員をしていたときに
担当した20歳の男の子のことです。
その子は岩のように心がかたく、
氷のように心が冷たい人でした。
別の相談員が数回面談をしてお手上げで
私のところに回ってきたのでした。
おどおどしたところもないけれど、
とにかく返ってくる言葉の中から
熱いエネルギーを一切感じない。
怒りというのもエネルギーという点でいえば「熱」ですが、
それすらも感じない、そんな人でした。
そんな彼も面談を重ねながら
少しずつ私に心は開くようになってきて、
あるときガソリンスタンドの
アルバイトをすることになりました。
アルバイトの初日を過ぎた最初の面談のとき、
どんな様子だったかと聞くと
「行かなかった」
というのです。
つづいてどんどんいか自分がアルバイトに向いていないか、
言い訳の言葉がたくさん出てきました。
「むかしアルバイト先の人間関係で傷ついた」
「働いても意味はない」
・・・
その言葉を聴きながら感じたことは、
「本当にアルバイトしたくないんだな、この子は」
ということでした。
一通り聞き終わったあと、
正直にその気持ちを伝えました。
「働かないことが君を一番大切にすることならば、働かなくていいんじゃないかな。」
その言葉を聴いた瞬間、
伏せ目だった彼が驚いて目を見開いてこちらにを見ました。
「え!うそ。働かなくていいなんて言っちゃうの!?」
と言いたげな目です。
ここからは推測ですが、
おそらくいままでそんなこと
言ってくれる人がいなかったのでしょう。
まわりにいる大人たちはきっといつも彼に
「正しい行動をとらせよう」
「しっかりさせよう」
「直させよう」
としてきたに違いありません。
「出来ないこと=悪いこと」
「出来て当たり前」
「当然やるべきこと」
いつもそういう接し方しかしかされていなければ当然、
「大人から言われることには反発する」
という自動反応が身につくでしょう。
ところがその時はいつものように
反発してしまったら都合が悪いことが彼に起きたのです。
「働かなくていいよ」
に反発したら、働くことになってしまいます。
でも、
その時の彼から感じた最も強い印象は、
反発できないことへの戸惑いよりも、
はじめて自分の気持ちを受け止めらたことへの戸惑い
の方が強かったように見えました。
実際、
彼はいままでに経験がないその出来事に、
返す言葉が見つけられず、
しばらく沈黙していました。
そして泣きだしました。
泣けばいいということではありませんが、
岩のように硬く氷のように冷たかった心が
解けたのをはじめてみたきがしました。
「本気でそのままの自分を受け止められる」
という経験が本当に貴重なのだと
あらためて確認できた出来事でありました。
最終的に彼は、
半年の面談に通いつづけ就職をしました。
そして、
最後の面談の日にお母さんと一緒に
お礼にきてくれてくれました。
・・・
悩みや苦しみを引き起こす原因の多くは、
過去に獲得してきた意識と無意識の
心のクセだと思います。
たしかに人には錯誤帰属のよう
自分ではコントロールできない
心の動きがあるようです。
でも、
そういう無意識に獲得している心のクセも
何かのきっかけで崩れることがあるのです。
なにごとも目に見える表面的な現象にとらわれず、
内面にこだわりたいものですね。
これをお読みのあなたは、
本気で受けとめられた経験はありますか?
・・・
それ以前にあなた自身は、
何があっても、なくても、
自分を認めてあげらているでしょうか?
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