年賀状の季節になると、毎年
ある男の子のことを思い出します。
男の子といっても二十歳くらいの子ですが。
以前、就労支援の団体で活動していた時のこと。
就労支援を希望してきているはずなのに、
相談を始めてみると、
「いかに以前のアルバイト先で、嫌な思いをしてきたか」
「いかに自分がダメで、向いていないか」
力説する子がいました。
「上司や仲間が自分い優しくて、気を使ってくれる職場なら働きたい」
と一瞬、前向きっぽくいうのですが、
正直、
「そんな職場ないよなぁ」
という感じでした。
いかに自分に合う職場がないか力説する
彼と話していて感じる印象を一言で言うと
「怯えている」
感じでした。
結局いまのまま人に対する怯えを抱たまた
アルバイトはじめても、きっとまた
周りに過剰反応してうまくいかないだろう。
偶然、素晴らしい上司や仲間に会うことを期待して
アルバイトの応募をしまくるというのも手ですが、
疲弊してしまうケースの方が多いですし。
そこで、彼との間で、
「少なくとも職場は働き手を養生させるための場所ではない」
ことをお互いに確認したうえで
感じたことを正直に伝えました。
「それだけ過去にアルバイトで傷ついた経験があって、新しい人や場に行くことに不安があるなら、アルバイトができずにいるのだから、アルバイトをしないことが今のあなたを本当に大切にしていることだと思う。」
と。
すると、一瞬「えっ!?」と驚いたように
目を見開いてから彼の態度が一変しまして。
今度は、
「こういう職場なら、あうかもしれない。」
「ああいうことならできるかもしれない。」
と、できないことではなく、
出来そうなことの方を話し始めたのです。
時間はかかりましたが、結局、
彼は、自力でアルバイト先を探してきて働き始めました。
その彼が探してきたアルバイトが、
年末年始限定の短期間の郵便局での
年賀状の仕分け作業でした。
だから、この季節になると
彼のことを思い出すんですね。
・・・
「否定されると思っていたら、肯定されて驚いた」
まるでお笑い芸人のダチョウ倶楽部の
ネタのようでありますが(笑)、
そこにはひとつの真理がある気がします。
彼はきっといままで周りから(そして自分自身も)、
「早く働け」
「働くことが正しいことだ」
というメッセージばかり受けとってきたことでしょう。
その理屈は正しいからこそ、
「難しい、難しい」
「出来ない、出来ない」
「環境や人が悪い」
と、自分を守るために
必死に言い訳をせざるを得なかったのだと思います。
おそらく彼の人生の中で、私が接したように、
「今のあなたを本当に自分のことを大切にしていると思う。」
と言われた経験はなかったのではないでしょうか。
他人から否定され、
他人からの否定に反発をしながらも、
内心、自分すら自分を否定してきた。
そんな彼だとしたら・・・。
肯定されて戸惑うのも無理はありません。
ここからが人間の面白いところだと思うのが、
「自分を否定することで、自分を保っていた」
はずなのに、
否定されず肯定されると、
なぜか頑なになっていた心を
自然と自ら解放していったりするのであります。
これはおそらく
理屈や積み上げてきた自分の歴史を越えて
人の中には
「肯定されたら嬉しいと感じる」
本能があるからではないかと、思えて仕方ありません。
・・・
いかがでしょうか?
「正しいこと言えば言うほど、相手の心が固くなり、人間関係がギスギスした」
経験はないでしょうか?
それはきっと、言っている理屈は正しくても、
人間関係づくりの方法としては間違っているのでしょうね。
個人的には、成人したら働いたほうがいいと思っています。
でも、同時に、よくよく話を聴いていて
彼には彼の必要があって、いま働かないことが
唯一、彼を保つ方法なのだろうとも思ったわけです。
自分の常識で相手を見るか?
いま目の前の人をそのまま見るか?
の違いですね。
・・・
自分と価値観が違う人の話を聴くときのポイントは
「『それでいいと思うよ』と言い方だけ肯定して見せてもダメ」
ということです。
表面的に言い方だけ肯定しても
本心で思っていなければ言葉が
軽くなり、浮いてしまします。
ですから、本当にこちらが
「この人は、いまが本当に精いっぱいで、そうせざるを得ないところにいるんだなぁ。」
と感るところまでよくよく話を聴き、
本当に感じられたままに伝えることです。
価値観が同じ話なら、そもそも
真剣に聴かなくても大丈夫なわけです。
価値観が違うからこそ、
話はちゃんと聴く価値がありますね。
・・・
もう3年たっているので、どうなったかわかりませんが、
その年、彼は、
年末限定の短期アルバイトのはずが、
勤務態度が評価されて、お正月が終わっても、
そのまま働き続けることになったのでありました。
【この言葉を自分に言ってみよう!】
「本心で受け止めてもらうと、心は自然と開く」
自分とは違う価値観を持っている人を
「本心で」受け止める。
ここは練習ですね。
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