机に紙を貼る理由はない

仕事を終えて深夜に帰宅したら、

5歳の息子がまだ起きていて、

玄関まで迎えに出てきてくれました。

いつもニコニコしている息子をみて、

なんだか一日の疲れが癒されます。

息子は迎えに来たその足でそのまま、

玄関脇すぐある、私の書斎に入っていきました。

そして言いました。

「お父さん早く来てぇ~。」

何かをしたくて、

私を待っていたようです。

(よからぬことで、なければいいが・・・)

いつものように若干の不安がよぎりながら行くと、

部屋に入るや否や息子が、

「これ貼っといてあげるねぇ~」

といいながら、書斎の机の引き出しから

セロハンテープを取り出して

名刺くらいの小さな白い紙を、

天板のど真ん中に貼っています。

見ると、それは息子の名前が3つ書かれた、

朱肉印のハンコが押された紙でした。

・・・

あとで居間に行ったときにわかったのですが、

保育園の持ち物に、たくさん名前を書かないといけないので、

手間を省くために買ってあったハンコを見つけ、

それを押すのが楽しくて、遊んでいたようです。

・・・

机に紙を貼り終えると、

息子は満足そうな笑みを浮かべて

こちらを向いて言いました。

息子「お父さんが忘れるといけないから、貼っとくね!」

「・・・忘れるって何を???」

息子「だ・か・ら・、僕の名前忘れるといけないから貼っとくね!」

そう言い残して、

バタバタと部屋を出て行ってしまいました。

ひとり取り残された私は、

「忘れるって…、俺が付けた名前なんだから、忘れるはずないんだけど(汗)」

認知症にはまだちょっと早いのに、

と思いながら、

同時にこれは、面白いものを見たなと思ったのでした。

なにが面白いかといいますと・・・、

人間は5歳の時からすでに、自分の欲求を

他人の責任にすり替え、

「合理化する能力を持っている」

のが見られて、面白かったなと。

・・・

「合理化」とは、欲求が満たされない時に

人が起こしうる、心のメカニズムを

まとめた防衛機制という

考え方の中に出てくる人の心の動きです。

精神分析のジグムント.フロイトの娘の

アンナ・フロイトさんがまとめた考え方です。

例を出して説明しますと・・・。

「ハンコをつきたい」

「紙を机に貼りたい」

という欲求を持っているのは息子で、

私が「ついて欲しい」「貼って欲しい」と

思っているわけではありませんね。

「自分の名前のハンコが押されたた紙を、机に貼る」

という行為そのものには、

大した意味がないことを

息子の脳も無意識にわかっているでしょう。

でも、やりたい欲求があって、

それを実行するには何かしら

「お題目」

が必要なわけです。

その時に、

「ただ貼りたいだけ」

といえば、

感情を正直に表現できているわけですが、

そうはせず、

何かしら正当化しないといけない気がして、

自分の中で了解できる理由づけを

したくなるというわけです。

多くの人が無意識のうちに

普通にしていることであります。

・・・

自我がまだ発達してきていない、

2、3歳の頃の息子ならたぶん

「貼りたいのぉ~~!!!」

とただダダをこねるように言っておしまいだったでしょう。

でも5歳になった息子は、

それなりに自我が発達してきて、

あたかも私のためであるかのように、

「合理化できるまで成長していた」

のでありました。

紙切れ一枚から、わが子の成長を感じることができました。

いかがでしょうか?

このBLOGをお読みいただいているあなたは、

自分の欲求を正当化するために、

いったいどんな合理化をしていそうですか???

自然な心の動きですから、

治さなくていいので、気づいておきたいですね。

・・・

そして何より、

どんな用件であれ、息子が帰宅を心待ちにしてくれているのは

やっぱりうれしいものであります。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「自分の欲求を、他人の責任にしていないか?」

<お知らせ>

感情と欲求は非常に近いところにあります。

悩みというのは欲求が満たされないところから

湧き上がってくる感情ですね。

欲求も感情も聴きとれると、

人との関わり方が見えてきます。

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