支えるより、抱えられるように聴く

「話を聞いてあげること大切」

そういう人は増えてきた。

なぜ大切か訊くと、

「ちゃんと話を聞いてくれる体験はなかなかできないから」

8割がた、その手の回答が返ってくる。

たとえば、聴いてあげるボランティア、

傾聴ボランティアは、普段話したくても

話せない人にとって、心のオアシス。

会社でも、家庭でも、ボランティアでも

「聴く」ことには人を「支える機能」が確かにある。

では、私自身は誰かを支えるために

聴いているかというと

意外とそうでない時の方が多い。

「支える」ために聴いているというより、

「抱えるため」に聴いているときが多い。

誤解されたくないので補足すると、

「支えない」と言っているのではない。

「支える」のは目的ではなく

「抱える」ための手段、通過点でしかない。

・・・

昨年、103歳で祖父が亡くなるまで、

よく京都にある介護施設まで会いに行っていた。

耳は遠いが認知症がなかったので、

祖父とは普通に会話ができた。

行くたびに30分~2時間ほど、話を聴いていた。

あるとき祖父と話していたら、

施設の職員さん2人が少し離れたところで

こちらをみながらうわさ話しているのが聞こえた。

「きょうは●●さん(祖父)、よく話すわね」

傾聴していたら、たくさん話してもらえた。

傾聴ボランティアの経験者なら、

そういう経験がきっとあるのでしょう。

ところが、

私はというと、たくさん話してもらっても

特にうれいと思わない。

なぜなら、

まず第一に、話せないのにも理由がある。

話したくない気持ちも尊重したいと思う。

だから、私の中には

「話す=いいこと」という、

いい悪い思考の価値観がそもそもない。

沈黙もらOK。

そしてもう一つ。

今日一日たくさん話せても、

残りの一か月弱(仮に29日とする)たくさん話せていない

時間があることを知っている。

今日という一日は確かに大切。

でも、残りの29日に思いをはせると、

たった1日、笑顔が見れたからと言って

素直に喜べない。

30分の1の笑顔の奥に、

30分の29の寂しさを感じずにはいられない。

一日聴いた位で、自分は

いいことをしたなんてとても思えない。

神妙な気持ちになる。

カウンセリングでも、そうでない時でも、

聴くときに目指しているのは、

いま目の前の人を支えるように傾聴しながら、

目の前に私がいない残りの29日、

その人自身が、自分を支えらるように

なることを目指して傾聴しているつもり。

私が傾聴してあげることより、

その人自身が自分の心を24時間

傾聴できることの方が大切ではないだろうか。

「自分で支える=抱える」

と呼んでいる。

私が傾聴してあげるのは、

その人自身が自分で傾聴

できるようになるために必要な、

「聴かれる良さ」を疑似体験

してもらっているに過ぎない。

私の目の前で笑顔になってもらえるかどうかなど

たいした問題ではない。

私が目の前にいない時間の方が長いのだから

その時に、出来るだけ笑顔でいられる

時間が増えるにはどうすればいいか?

いつも考えている。

一瞬、目の前で気分をよくさせるだけの

支える聴き方では物足りない。

喜びも悲しみも分け隔てなく、

日々抱えながら、

でも、

生き生きと過ごせることを願って聴いている。

そこに傾聴の醍醐味があると思っている。

自分で自分の心を傾聴できるようになることにこそ

本当の意味がある。

傾聴の祖、C.ロジャーズは言っている。

「人間には、自己成長力がある。問題を解決するのは本人だ」

と。

まさにその通りだと思う。

・・・

マッサージで例えるなら、

「聴いて支えてあげる」は、

10分クイックマッサージ。

「自分で聴けるようになる」は、体質改善。

私も昔クイックマッサージに通っていた経験がある。

クイックマッサージの存在は否定しない。

今日の痛みをとるために、

クイックマッサージが欲しいときもある。

でも同時に、

世の中、クイックマッサージだらけに

なってもいいのだろうか?とも思う。

クイックマッサージには

クイックマッサージの良さがある。

でも、

クイックマッサージに通い続けても、

自分でケアできるようにはならない。

「目の前で喜んでもらおう」

とする聴き方と

「目の前にいない時も笑顔でいてもらおう」

とする聴き方では目的がちがう。

後者が増えたほうが、

社会のみんながより楽に生きられるに違いない。

確かに、笑顔をもらうと心の栄養になる。

でも、

「いいことをしてる風味」の

自分に酔っていても仕方がない。

せっかく傾聴を学ぶなら、

支える聴き方ができるようになった人は、

ぜひ、抱えながら生きられる聴き方を

目指してみてはいかがでしょうか。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「まず『何のために聴くか?』ありき」

目の前にいるときにその人の笑顔を見ても、

もろ手を挙げて喜ぶことはできない。

かえって胸が締め付けられるような

気分になったことがある。

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