すれ違う仲

朝、学校に行く準備をしている娘が、

「お父さん、りんご酢とって!」

といった。

いわれたとたん、頭の中に、

食酢と同じ形の瓶に入った

以前かったことがある、りんご酢のイメージが

頭の中に浮かんできた。

私「何に使うの?だいたいうちには今、りんご酢ないし。」

娘「うそ!あるはず。前買ったもん」

私は買った記憶がない。

妻と一緒に買いに行ったのかと思い、

私「そう、どこに置いたの?家庭科かなんかで使うの?」

と訊いた。

すると娘は、怒って

娘「前、買ったでしょ!」

といった。

私「りんご酢なんて買ってない。」

・・・

そこで初めて、娘は少し立ち止まって考えはじめ、

言い方を変えてきた。

娘「冷蔵庫の扉の上に置いてある、紙パックのやつ。」

そこで初めて、こちらも

何を言わんとしていたのか分かった。

娘が言いたかったのは、酢は酢でも

りんご酢(瓶)ではなくて

黒酢はちみつのパックに入った飲料のことだった。

(リンゴが入っているかどうかは知らない)

「酢」だけおなじでも、

そこから察ることができるわけがない。

それは

「草葉の『陰』から応援してます!」

といわれて、そこから

「『陰』ながら応援しています!」

を察しろというのと同じくらい難しい。

曖昧さが許されるのは、日本語のいいところでもある。

でも、曖昧すぎると伝わらない。

誤解を生む原因にもなる。

・・・

黒酢はちみつ飲料とりんご酢。

これくらいハッキリ違いがあってくれれば、

その場でズレているのがわかるし、

お互いに修正できる場面も作りやすいだろう。

まず

「ちゃんと伝えないと伝わらない」

ということを言いたい。

次に、

「言い間違いくらいは許してあげたらいい」

とも言いたい。

話しているほうの人の頭の中では、

黒酢はちみつ飲料をイメージしながら

「りんご酢」

と言っている。

人間の脳は、言葉より、イメージ優位。

だから、本人は間違いに気づくことはできない。

間違いは誰にでも起きる。

許してあげよう。

聴く方もぼんやりと理解しないことだ。

クリアに理解できているか自分の中で確認し、

分かっていることと、分かっていないこと

自分の中で確認しよう。

分かっていないことに気付ければ、

立ち止まって内容を深く質問することもできる。

・・・

すれちがいを一番いいのは、

相手に見えている世界が何かを、

確認しながら話を進められれば最高だが、

それには、それなりの練習が必要だろう。

そこまでやっても、

聴いているほうもわかったつもりに

なってしまうことはある。

つまり、誤解は完全に防ぐことはできない。

で、あればせめて、伝える方も、聴く方も

「自分はちゃんと理解できていないかも」

という可能性だけは、

いつも心のどこかに持っておくと

誤解は生じても、自分の間違いに気づかず、

むやみに他人に八つ当たりすることは減る。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「向こうもこっちも、勘違いしているのが当然」

朝食はほとんど食べない娘は、

黒酢はちみつ飲料だけ飲むと

颯爽と学校に向かって出て行った。

すれ違いはあっても、何も問題はない。

<お知らせ>

相手が何を言わんとしているのか?

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