傾聴を使った問題解決(2)問題の分離、課題の共有、願望への提案

※傾聴を使った問題解決(ステップ1)からの続きです

ステップ1で最終的に理解した

「願望を阻むもの」へのアプローチが「問題解決」となります。

問題解決には方程式があります。

「問題=事柄+気持ち」

事実の変化と、事実に対する受け止め方の変化(気持ち)、

両方あって初めて問題解決です。

論理的思考が強すぎる人の誤りは、

事実となる事柄だけ変化させれば、

結果が出て、問題は解決すると勘違いしている点にあります。

たしかに事柄が変化しただけで、解決する問題もあります。

でも、事柄は解決したように見えるのに、

何かすっきりしない。

見かけ上解決しても、内面的に解決していない問題もあります。

それは、「気持ち」に何かかが残っているということです。

そして「納得」という状態は、

事柄がきれいに整うことを言うのではなく、

「気持ちが」が受け入れた状態のことを納得といいます。

商品を買うのも納得がカギです。

納得して買えたものは満足になるし、

物は手元にあっても納得していなければ、

不満や後悔になります。

すべての納得は、「気持ち」が決めています。

納得が得られないのに、事柄だけを

満たそうとする行為を「説得」といいます。

事柄も満たし、気持ちも満たされて初めて

問題は解決されたといえます。

そう考えると、世の中には、なんと事柄だけで

問題解決をしたと思い込んでいる

勘違いの多いことか・・・。


問題の分離


表の主訴と裏の主訴の関係について説明しましょう。

たとえば、

「仕事で成果が出せない」

ということで相談に来た人がいるとします。

これは本人が自覚できている表の主訴です。

そのときの裏の主訴は

(聴いてみないと分かりませんが)

たとえば、

・自分能力への自信のなさ

・人と自分を比較してしまう性格

・過去に抱えた何らかのトラウマ

・自己肯定感の低さ

・「こうあるべきだ」「ねばならない」というすべき思考の強さ

など自分自身に対する

「受け止め方(=気持ち)」が

影響を与えていことが往々にしてあります。

まず、表の主訴と、裏の主訴をしっかり分けて理解しましょう。

そして、表裏それぞれについて、

事柄の問題と、気持ちの問題を

しっかり分けて理解しましょう。

つまり、紙の中心から縦軸に「表裏」。

横軸に中心から「事柄、気持ち」をという

4つのブロックに分ける感じです。


クレームの原因


ビジネスで起きるクレームの多くは、

品質が悪くて怒る1次クレームよりも、

むしろ、第一報が入った時の対応がまずさが原因で

感情が火を噴いてしまう「2次クレーム」が厄介です。

2次クレームは、言い換えれば事柄に正しく対応しても、

気持ちを無視したことから広がってしまうクレームです。

気持ちを共感的に100%理解をしたうえで(×同感)

具体的な事柄への対応はあとにしないと、火を噴きます。


「分ける」と「分かる」


表の主訴と裏の主訴を分ける。

事柄と気持ちを分ける。

同感と共感を分ける。

一般会話と傾聴を使い分ける。

物事がうまく進むときの条件には必ずこの分離、

「分ける」ことの質が関係してきます。


課題の共有


次に課題を共有する段階です。

お互いが納得できる課題が設定できて、

初めて、のちの具体的方策が意味を持ちます。

課題を提案するときは以下のような提案の仕方となるでしょう。

「あなたの気持ちの問題が楽になるために(気持ち)、具体的にはこのような方法(事柄)が考えられるのですが、いかがでしょうか?」

裏の主訴に付随する「願望」が叶っていないという

問題があることをやり取りしながら、

課題の共有をしていきます。

例)「ここまで話を伺っていて、仕事の成果が出ていないことですが、もともと自分に自信がない。焦ってしまうという課題がおありのように感じたのですが、いかがでしょうか?」

課題の提案は、こちらの解釈の

一方的な押し付けにならないよう、

丁寧な姿勢で、相手に「~でしょうか?」と

確認をとる、伝え返しの形がいいでしょう。

決して誘導尋問にならないように。


大きな課題→細分化した具体的な課題へ


裏の主訴にまつわる願望から、

課題が共有出来たら、その課題に対して

具体的に、相手が出来そうなことがあるか?

訊きながら進むのもいいでしょう。

また、こちらから解決に向けた提案を

こちらからするのであれば、

提案の主語は必ず、

「あなたのその願望(裏の主訴の反対)を叶えるために~」

という主語になります。

こちらの都合だけ、できることだけを

一方的に伝える提案は、受け入れてもらえません。

限られた手持ちの提案の中から、同じ提案をするにしても、

できる限り、願望の達成に近いものを提案します。

提案の内容そのもの大切ですが、

もっと大切なのは、簡単な提案であっても

「意味と価値」を感じてもらえることです。

表面的な解決方法ではなく(表の主訴へのアプローチ)ではなく、

簡単なことでも、裏の主訴に付随する願望(問題の発生源)に対して、

アプローチししましょう。

仮の例でみてましょう。

例)4年制大学卒。25年間引きこもり状態、アルバイト経験なしの人が正社員になりたいという希望を持っている。

・表の主訴→「正社員で働きたい」

・裏の主訴→「自信がない」

だったとします。

表の主訴=問題と勘違いすると、いきなり

「履歴書の書き方を練習しましょう」

「面接の練習をしましょう」

から始めてしまいます。

これではおそらく失敗するでしょう。

表の主訴への提案はあとにして、

裏の主訴への支援をしてからでないと、

心のエネルギーが向きません。

心のエネルギーが上がることにつながる、

具体的施策を模索します。

この例の場合、その人にとっての

「自信のなさ」とはなにか?がポイントになるでしょう。

「自信がついていく支援」が具体的施策に必要です。

その際、気を付けないといけないのは、

「働いているうちに自信がつくさ」

など、根拠のない励ましは方策ではなく、

根性論で無効です。

「偶然うまくいくかもしれないから、結果がでたら自信がつくさ」

では、支援ではなく下手な鉄砲・・・で、

偶然に期待することも、方策とはなりません。

本人の中で自信となる確実なものを

積み上げていくための提案が必要です。

この場合、認知行動療法的なスモールステップで

具体的な施策を使うことが多いです。

課題が大きすぎると、施策がぼやがちです。

施策が具体化しにくい時は、課題をより細分化することで、

違った施策の設定が見つかることもあります。

・・・

わかりやすい例とするために、

仮に先ほどの例に対して、就職するということだけに

限定した提案をすると仮定しましょう。

(実際には、生活全般の提案をすることが多いです)

裏の主訴である「自信のなさ」にも、いろいろな種類があり得ます。

・朝起きられるかどうか自信がない

・電車の人混みに耐えられるか自信がない

・他人から自分がどう思われるか自信がない

・アルバイト経験もないのに、正社員の仕事ができる自信がない

・正社員という責任感に耐えられる自信がない

・失敗した時怒られると、委縮してしまいそうで自信がない

・自分みたいな人間が、お金をもらってしまっていいのか自信がない

・職場になじめるか自信がない

・親から認めてもらえるかどうか自信がない

など。

これらの自信のなさから、

「本人にとってできるだけ重要かつ、取り組みやすい課題」

に絞り、方策を提案することで、

「自信がない」という状態を改善するのが目標となります。

なので、たとえば願望への提案としては、

「正社員で働きたいと思うけれど(表の主訴)、自信がない(裏の主訴)ということであれば、もし毎朝決まった時間に起きられる自分になれたら、少し自信になりそうでしょうか?」

などとやり取りしながら、

「自信をつけるため」のいまできる課題を共有していきます。

課題をを細分化し、より具体的な課題に絞り込んで

相手から「はい」とすっきり受け入れられるものを

今回の課題とします。

課題の共有ができたら、その課題に対して具体的に

何をするか内容を詰めていきます。

提案はすべて「願望を叶えるために・・・」になります。

願望は裏の主訴と直接つながっていますから、

主訴を聞き取ることが、どうしても必要なのです。

裏の主訴が聞き取れていない状態での提案は、

安易なアドバイスになりがちなので避けましょう。

余計な口を挟まずに、理解を深めようと

傾聴の聴き方をすることで、

裏の主訴と願望が聞き取りやすくなります。

・・・

今回で完結するつもりでしたが、

まだ施策の提案が残っています。

かなりの分量になってしまうので、

つづきの「願望への提案」「方法の決定」と、

全体のまとめは、次回に回させていただきます。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「必ず相手の願望に沿った、課題を提案する」

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