傾聴を使った問題解決(1)理解、受け止め、支える

「傾聴なんてビジネス使えない」

10年前、うなずき、あいづちくらいしかできなかった私は

そんな、傾聴できない人からの口撃に反論ができませんでした。

今は違います。

「傾聴ができないで、ビジネスなんてできっこない」。

と言い切れます。

一回では全部書ききれないので、

2回に分けて、傾聴を使った問題解決の流れについてご説明します。

・・・

ビジネスでも、心理カウンセリングでも

問題解決につながる流れの構造は100%同じです。

傾聴による問題解決は、

大きく2つのステップに分かれます。

◆ステップ1「理解、受け止め、支える」の段階
◆ステップ2「問題の分離、課題の共有、願望への提案、方法の決定」の段階

今回は、ステップ1についての解説です。


 ステップ1「理解、受け止め、支える」段階


全体の流れは以下のような感じになります。

1.表の主訴の理解

2.事柄+気持ち両方の聴き分け

3.裏の主訴の理解

4.気持ちを支える

5.願望も一緒に支える

それぞれ、見ていきましょう。


 1.表の主訴の理解


表の主訴とは、話し手が

「自覚して話せるテーマ(問題、課題)」

のことです。

例)最近仕事がうまう行かなくて悩んでいるんです…

会話の入り口はここから始まります。


 2.事柄+気持ち両方の聴き分け


表の主訴から始まる会話に含まれる、

①事柄(事実)
②事柄に付随する気持ち

の両方を聴き分けながら聴きます。

気持ちに主に応答することで、

気持ち中心に見つめ話しやすくなり、

のちの裏の主訴の理解につながります。


 3.裏の主訴の理解


一つ一つ、つれづれなるまま語られる

エピソードの内容はバラバラでも、

そこに流れる共通の「想い」があります。

その共通する根っことなる想いのことを

「裏の主訴」と呼んでいます。

たとえば、様々な人への不満を漏らす人の裏の主訴は

「誰も自分を大事にしてくれない」

ということかもしれません。

エピソードの事柄(事実)も聴きながら、

「(要するに)、誰も大事にしてくれないってことを伝えたいんだなぁ」

という風に、

裏の主訴は「要するに」という形で理解できます。

主訴にも種類があります

・「事柄の主訴」
・「気持ちの主訴」

傾聴で聴きとろうとするのは、

「気持ちの主訴」の方です。

気持ちの主訴とは、

「その事柄について、どう思っているか?」

事柄に対する「受け止め方」のことです。


 4.気持ちを支える


人が語りたくなるのは、

何かの事柄が起きたからではありません。

起きた事柄について、語りたくなる

「想い」があるからです。

受け止めるべきは、事柄(事実)ではなく、

「事柄に対する想い(=気持ち)」

先ほどのように、

「要するに、誰も自分を大事にしてくれない」

という裏の主訴の持ち主であれば、

(気持ちの)裏の主訴を聴き取り、

語らざるを得ない根っこの気持ちに共感し、

支持し、他者がまず

「大事にしてあげる」体験を与えることで、

「分かってもらえた」という安心感を得るでしょう。

悩みや苦しみを抱えている人は、

心のどこかに孤独を抱えていたりします。

しっかり裏の主訴を理解して

支えないといけないですが、

総じて、共感的に理解を示され、

本当に自分はこれでよいのだろうかと

揺れ動いている人が

100%支持されるという体験をすると、

癒しにつながりやすいでしょう。


 5.願望も一緒に支える


裏の主訴を別の言い方をすると、

何かが叶っていないことから生まれる

「叶っていない想い」

と言い換えることができます。

逆を言えば、

裏の主訴をひっくり返せば、

すぐ反対側に

「叶えたい願望」

が見えてきます。

裏の主訴さえ理解できれば、

願望の理解は、とてもシンプルです。

そして、

次回説明する、ステップ2の問題解決の味噌は、

いかに、この裏の主訴の反対にある

「願望」を叶えるための提案が具体出来にできるか

にかかっています。

・裏の主訴がわかれば、願望がわかる

・願望がわかれば、何を解決策として提案すればいいかわかる

というわけです。

なので、どうしても、

裏の主訴の理解が必要です。

たとえば、

「誰も自分を大事にしてくれない」

という裏の主訴の持ち主の「願望」は、

単純にそれをひっくり返して、

「私は、みんな(あるいは大切な人)から大事にして欲しいのです」

と理解できるでしょう。

このあとにつながる、問題解決のための方策の提案というのは、

必ずこの「願望が叶うための」提案でなければいけません。


 スキルはただの手段に過ぎない


「たくさん話させてあげれば、スッキリするよ」

などといいますが、、

うなずき、あいづち、くり返し、

伝え返し、質問などの傾聴のスキルは、

そのスキル自体に特別な効果を

期待するものではありません。

スキルは、裏の主訴を聴き取るという目的に対する

手段といっても過言ではありません。

話させることが目的ではなく、

理解し支えることが目的なので、

そこを勘違いしないようにしましょう。

あくまで、裏の主訴を知り、根っこからの

癒しにつなげるための1プロセスなのです。


 傾聴で聴くとは?


傾聴で「聴く」とは、ここまでの

5つのステップの流れの中で、

・うなずき、あいづちで受容的な態度を示す

・気持ちのワードのくり返しで、気持ちを受け止める準備があることを示す

・気持ちを明確にするための質問で、事実の方ではなく、人間(気持ち)として受け止める準備があることを示す。

・伝え返しや、要約で、気持ちを理解したことを共有するしたことを示す。

・裏の主訴となる悩みを抱えざるを得ないつらさについて、共感的に理解を示す。

そして、もう一段階深くやって欲しいのが、

「その願望を持っているあなたであるにもかかわらず、その願望が叶わらない(裏の主訴)のですね・・・」
と、

・願望と裏の主訴の両方を明確に理解していることまで含めて、共感の想いを示し深く支える。

ここまでできたら素晴らしい。

裏の主訴を聴き取るのは

「深く支えるため」

と言っても過言ではないのです。

もし、ここまでできれば、

ステップ1「理解、受け止め、支え」の

「相手を理解し、しっかりと受け止める」は

100%近く達成できたといえるでしょう。

実際には、完ぺきはないと思いますが、

傾聴ボランティアなど「受け止める」ところまで、

しっかりやりたい方は、ぜひここまでを

目指してやって見てはいかがでしょうか。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「聴くのは主訴と願望を知り、深く支えるため」

<お知らせ>

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