人生最大の危機

いつもありがとうございます。

高校時代、「はじめに」と「おわりに」だけ読んで、

全校生徒の中から3名だけ、読書感想文で表彰された経験がある。

要領がいい、岩松正史です。

”人生最大の危機は、どのように発生し、どのように解決されるのでしょうか???”

先週から工事が始まった。

当社事務所兼、セミナールームから手が届く横にある

老朽化した大きなビルを、解体する工事。

先週は、足場と防音壁の設置だけだけれど、

それだけでも、かなり騒音がひどい。

セミナー開催会場としては、最悪の出来事。

この10坪足らずの部屋で、

会社全体の売り上げの90%を稼いでいる。

転居も考えた。

でも、実際騒音がどれくらいなのか。

どれくらいの期間継続するかもわからない。

たった数か月のために、

引っ越し費用を出すのは、現実的ではなかった。

廃墟ビルになってから2年。

いつかは来ると覚悟はしていたけれど、

実際に一か月前に、解体工事が決まった。

ついに現実になって、毎日胃が痛くなった。

でも、だれにも止められない。

死活問題といえる人生最大のピンチ到来。

・・・

工事は毎日うるさいわけではない。

日により、時間帯によりかなり異なる。

とうど昨日は、丸1日静かだった。

「今日はどうにか乗り越えた・・・」

安堵しながら、いつもより

早めに講座を終え家路についた。

・・・

事務所から自宅まで1時間強。

乗った電車は、自宅の最寄り駅まで

あと3つ足らずのところまでたどり着いた。

最近、睡眠時間が4時間ない日が続いていた。

「講座は早く終わったし、今日は帰ったらすぐ寝よう・・・」

さほど混んではないけれど、

座ることはできなかった電車の中で、

つり革にもたれながら、

そんなことをふと思った瞬間・・・。

オシリに違和感があるのを感じた。

オフになりかけていた交感神経が、

一気にオンに切り替わった。

「ヤバイ!!!」

と、思わせる脳内ホルモン

(ノルアドレナリン?)

も一気に放出された。

オシリのポケットにあるはずの

「財布がない」。

・・・

免許証もクレジットカードも入っている。

44年の人生の中で、

財布を一度もなくした経験がない私に、

人生最大の危機が訪れた。

「違和感を感じた瞬間は、ちょうど誰かに抜き取られたときだっただろうか???」

手でおしりを触って、

絶対に財布がないのを確認しながら、

後ろに立っている人に目を向けた。

そこには、

私と同年代のサラリーマン風の男性2人が

にこにこ談笑していた。

「この人たちは違うな・・・」。

時刻はまだ、夕方になったばかり。

電車内は比較的すいていた。

「この状況で、スリをするのは難しい気もする・・・」。

「先ほど停車した前の駅で、入れ替わった瞬間にき取られたのだろうか???」

考えても、わからない。

「その前、電車に乗る駅の改札を通るときは、財布はあっただろうか?」

(私はスマホにSuicaをいれているため、改札で財布は出さない)

「事務所ビルを出るときは、あったか???」

いろいろ考えてみたけれど、

スリにあった確証もなければ、

あっていない確証もなかった。

・・・

平静は装えていないだろうが、

装っているフリをして次の駅で降り、

40分かけて事務所に引き返した。

「あと3駅で家だったのに・・・」

でも、そんなことはもうどうでもいい。

「問題は事務所にサイフがあるか?ないか?」

その一点に絞られていた。

戻る道すがらも、

「財布が初めからなかったのなら、この40分の間に気付かないわけがない・・・」

・私の記憶力が「あやしければ」、サイフさ事務所にある確率が高い

・私の記憶力が確かなら、スリにあった確率が高い

どちらにしても、

最悪な結果しかない気がした。

でもどうせなら、記憶力の講師だけれど、

記憶力があやしくて、事務所に

財布があってくれた方がありがたいと思った。

人生最大の危機を乗り越える唯一の方法は、

私の記憶力の「悪さ」にかかっていた。

事務所の最寄り駅までついた。

走っても結果は変わらないが、

急ぎたくなる。

足早に事務所に戻り、

扉の鍵を開け、

ふだん荷物を置いてあるテーブルを見た瞬間

サイフはテーブルの上に
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「あった!」

・・・

私は、自分の記憶力の悪さに感謝した。

自然と口から、

「ありがとう!ありがとう!ありがとう!・・・」

と、誰に向かってかよくわからないけれど、

感謝の言葉が、あふれつづけたのでした。

こうして、私に訪れた「人生最大の危機」は、

自分の記憶力の悪さがゆえに引き起こされ、

記憶力が悪いがゆえに救われて終わった。

一言で言ってしまえば、

「自作自演の、人生最大の危機」

でも、感じた恐怖は本物だった。

・・・

他人が客観的に見ると、

「なんだ、バカじゃない」

でおしまい。

そんな話は世の中には多いだろう。

でも、本人は真剣そのもの。

忘れ物に限らず、人の悩みというやつは

客観的に聞いていると、くだらなく思える。

でも、本人はいたって真剣なんだと、よくわかった。

もし不安の最中に軽い気持ちで、茶化して聞かれたら、

きっと腹が立つに違いない。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「話しは自分事ではななく、相手ごとして聴こう」

そしてもう一つわかったことがある。

それは、

「人生最大の危機は、意外と頻繁にやってくる」

ということ。

サイフを心配しているとき、あれほど毎日気にしている

工事の騒音の心配は微塵もしていなかった。

要するに悩みや恐怖心というは、

あるようで、ないモノなのかもしれない。

その瞬間の受け止め方だけがすべて、ということだろう。

人間というのは、実にくだらなく、

実に面白いと、自分を見ながら思う。

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