最初のひとこと目をどう取り扱うかが、人間関係にも接客業にも大きく影響する。
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平日の昼間、仕事で知らない街に行ったときのこと。
待ち合わせまで、まだ時間がある。
新しいパソコンが気になっていた私は、
時間調整をかねて、駅前にあった大型家電店に入った。
そこにはお目当てのパソコンが
ちゃんと展示されていた。
そのパソコンは、いま私が持っているものと
同じ種類の、最新型。
キーを叩いたり・・・。
持ち上げたり・・・。
そうこうしているうちに、
店員が近づいてきた。
パソコンを持ち上げて、
最新型は、私が持っている旧型より
明らかに軽いことがわかった。
近づいてきた店員に、
私:「これ旧型より、だいぶ軽いですね。」
と話しかけた。
その問いに応答して、店員がこういった。
店員:「はい。でも、接続端子が全部変わったので、いままでの接続機器はそのまま使えません。新しい接続コードを買うか、接続できる用の変換器を買い足す必要があります。変換器持ち歩く重さを入れたら、前とあまり変わらないですね。」
私はその応答がつまらなかった。
「ネットでたくさん調べたからそんなこと知ってるし。端子なんか増えても構わないんだけどね。」
心の中でそう呟いて、
一応、表向きは「そうなんですね」と
知らぬふりをしながら、その場をあとにした。
この店員とはこれ以上話しても
得るものはなさそうだったと感じた。
私のように、雰囲気に流されやすい人間相手なら、
気分がよくなるように相手さえすれば、
もしかしてその場で
衝動買いするかもしれないのに・・・。
店員は正直・・・というか、
私が欲していることがわからず、
自分の知識と感想を披露してしまったために、
損をしたのではないだろうか。
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客の心に通じる言葉にはいくつかある。
中でもわかりやすくて、
しかも大切な要素が2つある。
「期待感を増す言葉」
「不安をとり除く言葉」。
心理学でよくでてくるF.ハーズバーグの
動機づけ要因と衛生要因と同じだろう。
そして、この2つの言葉のうち、
人間が喜ぶのは当然、前者。
「期待感を増す言葉」。
話が少し脱線するが、
個人的に、生命保険の話をするのが苦手なのは、
不安をとり除く言葉しか
出てこないからだと思っている。
不安を除去できるときの「うれしさ」というのは
どちらかというと、
喜びというより、不安が減る「安心」に近い。
そして、出来ることなら誰だって、
はじめから不安な要素など
ないほうがいいに決まっている。
だから、不安を除去する話は面白くない。
正確には、不安を除去する「だけ」ではつまらない。
まず先に「期待感」ありき。
期待感をもったうえで、
そこに発生しうる不安要素が
除去できれば、なおよい。
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簡単な言い方をすると、
マイナス言葉より先に、
プラス言葉を使おうということ。
そして、出来るなら会話の最後も
プラスの言葉でしめくくるのがいい。
先ほどの店員は、不安にまつわる話が得意だった。
マイナス言葉から使うのに慣れていた。
そして、それしか言わなかったのがマズいのだ。
もし先ほどの会話、こう言ったら
顧客はどう感じるだろうか?
「はい、旧型より軽くなりました(肯定)。
その関係で、接続できる端子は少し減りましたが(不安要素)、
別売の端子を使えば今まで通りのものも使えますし、いままで以上に接続数を増やすことも可能です(再び肯定)。
そして、最新型の端子の方が機能的には優れています(プラスαの肯定)。
軽いのが好きな人にはオススメです!(期待に応えられることの明確化)」
同じ事実を、どう伝えるかが大事。
そもそも私は「重さ」の話から始めたのだから、
その時点で、重さについて重要視しているとわかる。
客が気になっている話題から
対話を始めるのが、接客のセオリー。
「重さ」に対して「端子」の話から
始めてどうするという話だ。
しかも、
関心を示していない「端子」についての
「ネガティブ」な情報から積極的に伝えてしまっては、
「私は、これパソコンをあなたに売りたくありません」
と言っているのと同じ。
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スマートな接客の関わり方の順番としてはこうなる。
①客が発した最初の言葉から、心の主訴を理解する
②心の主訴に対して、期待に応えられることをちゃんと伝える
③何か不安要素はあるか尋ねる
④不安要素の有無と対策を伝える(この時点で別の商品を勧めてもいい)
⑤そして、最後の言葉はやはり、心の主訴に対して期待に応えられるというプラスの言葉で終わらせる
洋服でも、家電でも
客の心に沿った接客が出来ている人は
あまりいないと日々感じる。
これ以外にも、いろいろな接客業ならではの
よいアプローチがあるとも思う。
でも、
・冒頭からこちらの伝えたいことをいきなり伝えて失敗する
・心の主訴に触れないまま、いたずらに謙虚になりすぎて失敗する
このどちらかのパターンが相変わらず多い。
最初の一言の聴き取りが、かなり大事。
【この言葉を自分に言ってみよう!】
「謙虚さも積極性も、相手の心に寄りそえてなんぼ」
最近、売り場では客にあまり声をかけないというのが
主流のようだけれど、そういう
接客マニュアルを作るとだいたい失敗する。
もし接客マニュアルに書けることがあるとしたら、
「顧客の心の主訴に沿った対応をする」
ということくらいではないだろうか。
大事なのは「声をかけるかどうか」ではなく、
どうやって最初に「聴きとるか」。
それさえできれば、声はかけてもかけなくても
どちらでもいいのです。
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