顧客からのクレームという事に限定して言えば、クレームの半分は企業が自分で作っていると思います。
クレームには種類があります。
・1次クレーム:商品サービスの品質に問題がありお客さんから来る第一報。
・2次クレーム:1次クレーム時の初期対応のまずさから、本来怒らなくていいはずのお客さんが怒りだす。
1次クレームの解決策は改善活動による品質管理レベルの向上で品質を上げて解決するもんだなので傾聴は関係ありません。
問題は2次クレームです。
クレーマーという言葉がありますが、私自身ふだん顧客として企業に連絡をとった際「この対応失礼だな」と感じることは多々あります。
そういう時は、最初は商品の不具合を伝えるだけの純粋な気持ちだったのに対応が悪いと怒りたくなることもあります。
そういう経験はんないでしょうか?
これは企業が自分で作り出したクレームです。
初めから悪意を持ってくるクレーマー別ではない、普通の顧客が怒りだす場合の話です。
厳し言い方かもしれませんが、自分のコミュニケーション力の欠如を棚に上げて、怒りだした顧客を全員クレーマー呼ばわれするのはいかがなものかと思います。
顧客が怒りだす代表的な対処法が「事柄だけ処理しようとする」ことです。
例えば、ビデオカメラを購入した人が初期不良で壊れていたと連絡をしてきたとします。
同じビデオカメラの故障であっても、買った人によりそれぞれ事情は異なります。
例)
Aさんは70代の男性です。いままでビデオカメラなど触ったことがありませんでした。
でも今度手塩にかけて育てた一人娘が結婚することになりました。
そのタイミングで偶然ビデオカメラの存在を知りうを知り、これを使えば一生の思い出が残せるかもと期待して買いました。
Bさんは20代の男性です。
ビデオカメラが欲しかったわけではありませんが、たまたま電器屋さんにぶらりと立ち寄ったときビデオカメラが安売りしているのを見かけました。ボーナスが出たばかりで懐に余裕があったのでなんとなくビデオカメラを買いました。
AさんとBさん、2人のビデオカメラが壊れていた時、果たして対応の仕方は同じでいいのでしょうか?
Bさんに対しては恐らく、商品の型番と故障の症状をきいて事務的に商品の返品か交換をすれば大丈夫かもしれません。
でもAさんに同じ対応をしていいのでしょうか?
事務的いきなり「型番を教えてください」「どんな症状ですか?」「交換させていただきますので送ってください」と対応したら怒りだすかもしれません。
なぜならこの対応の仕方では主語がすべて「ビデオカメラ(=事柄)」だからです。
Aさん(人)のガッカリした無念さ(感情)に触れることなく、ビデオカメラだけの話で片付けてしまったらAさんは無視されたと感じるでしょう。
まずその人がどういう目的でその商品を購入し、不具合があったことで何を失ったか(何が叶わなかったか)くらいは聴いて、その期待に応えられなかったことについて謝罪の一言くらいは必要でしょう。
具体的な処理はそのあとです。
謝罪という事に関して言うと、事情もきかず何でもすぐ謝るようマニュアル化している企業もあります。
これも失礼な話です。
私は以前携帯電話会社で料金計算の手違いがあり電話したことがありました。
すると事情も知らない上司が出ていきいきなり「このたびは申し訳ありませんでした」と謝ってきたのです。
その時「あなたは何について謝っているのですか?」と質問したら案の定答えられませんでした。
その上司の方に「申し訳ありませんが事情をちゃんと理解して、何について自分が謝るのか理解してからもう一度電話をかけ直してください」と伝えました。
それから10分ほどだって電話をかけ直してくれたときの上司の態度は先ほどのとはうって変わって事の重大さを十分に理解してくれた上で「申し訳ございません」と言っていただけた感じが伝わってきました。
作業を分担して効率的に仕事をしようという企業は多いようです。
しかし事務処理はそれでうまく言っても、もっと大きな別のリスクを増やしてはいないでしょうか?
商品もサービスもそれを使うのは人です。
感情に触れることなく事柄だけで対応することは自らクレームを増やすリスクとなります。
特に2次クレームでは顧客も感情的になるので時間を多くとられます。
対応するスタッフのストレスも増えます。
対応するスタッフを雇い教育するのにお金もかかります。
傾聴だけですべてのクレーム処理がうまくいくわけではありません。
しかし傾聴のような感情にちゃんと関わるコミュニケーションができれば少なくともクレームを増やさないことに充分効果があるのではないでしょうか。
マニュアルに書けることがもしあるとしたら「相手の気持ちを一旦ちゃんと受け止めること」。
これを徹底すると大切な経営資源を無駄に浪費しないですむと思います。
社内では顧客対応のケーススタディをとあわせて、傾聴のスキルを身につけることをお勧めします。
※原文からの抜粋なので、書籍とは内容が異なります。
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