「そのままを受け入れる(受け止める)」ことを、
何か出来ないことを許してあげることと
勘違いしている人がいます。
また
「そのままを受け入れる」は、
相手を気分良くしてあげることとも違います。
そのままを受け入れるイコール、C.ロジャーズのいうところの
受容(acceptance)と解釈するのであれば、
ある教科書にはつぎのように書いてあります。
相手をそのまま受け入れること。どんな相手であっても、あるいはその人の考え方や行動が容認できなくても、選択したり、評価することなく、非所有的(カウンセラー側の条件をつけない)に受け入れることである。また、クライエントのあらゆる側面(肯定的な面、否定的な面)について、取捨選択することなく大切な意味を持つ者として積極的に関心を向ける(無条件の積極的関心)という意味もある。
・・・
あるお母さんが、毎晩塾が終わって
23時を過ぎても帰ってこない中学生の
息子を評していいました。
「あの、バカ息子、塾は9時には終わるのに、11時を過ぎても帰ってこないんです。どこをほっつき歩いてるんだか!!!(怒)」
傾聴の「くり返し」のスキルでは、
以下のようなワードを聞きとり
感情をのせてくり返しをします。
①感情を直接的に表すワード(形容詞など)
②意味や価値を表すワード(副詞、助詞など)
③独特の言い回し
④その人の精神的な世界を表す「事柄」の中にもある
この例の場合、
たとえば一般的にはあまり使わない
「バカ息子」というワードは
場面によりキーワードになりえます。
ではあなたが聴き手だったとして、
「バカ息子、帰ってこないんですね」
とくり返して言えるでしょうか?
傾聴の訓練を受けていない多くの人は、
躊躇します。
そして、こう言います。
「だって、人さまの子供を他人がバカ息子なんて言ったら怒りだすんじゃないですか?」
その聴き手の中にはきっと、
「バカ息子」という言葉に対して、
あるいは「バカ」という言葉に対して
「バカ=悪い言葉」というフィルターがあるのでしょう。
大事なのはバカという言葉そのものではなく、
そう表現したくなったクライエントの「気持ち」なのに。
表出した言葉じりに反応して
言い悪いと判断してしまったりします。
そんな人には言いたい。
あなたはそのままを受け止めるのではなく、怒らせないために聴いてるのですか?
「バカ」という言葉そのものに、
いい悪いはありません。
「バカ息子・・・」とくり返すということは、
クライエントに対して
「あなたはいま、バカ息子と表現しましたよ」
という事実を鏡に映して返しているだけです。
何気なく無意識に出てきたその言葉に対して
「それがあなたの気持なの?」
「もう一度吟味してみて」
というメッセージでもあります。
相手がいうにしても自分がいうにしてももし
「バカ息子」と表現することが「悪い」ということであれば、
クライエントはいま悪いことを言ったことになります。
息子に対していどのような感情を抱くか
感じ方にいい悪いなどありません。
・・・
もう一度ロジャーズの言葉読んでみてください。
どんな相手であっても、あるいはその人の考え方や行動が容認できなくても、選択したり、評価することなく、非所有的(カウンセラー側の条件をつけない)に受け入れることである。
そのままを受け入れることは、
聴き手側にとってだけでなく、
受け止められる側にとっても
事実があらわになるという点で
「よからぬ本当の自分」
を見つめることにもなりえるのです。
本当の自分にいい悪いと
条件をつけてはいけません。
「そんな(一般的には、あるいはクライエント自身にとって)よからぬ姿、態度であっても、私はあなたのそばにいます。」
という本当に無条件に受け入れることが
そのままを受け入れる受容的な態度です。
相手が喜んでくれたらいまの自分のやり方はOKで、
喜んでもらえなければダメ、というように外に基準を求め、
自分の中にある「いい」「悪い」を判断しているフィルターに気付きましょう。
そのままを受け止める(受け止められる)というのは時に優しく
でも言い悪い思考をもっている人には時に厳しいことなのです。
自分をそのまま受けとめて、
相手をそのまま受け止めるための傾聴を学びたい方は、
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