東京の事務所から帰宅するには、
大きな道を渡って地下鉄の入り口に入る必要がある。
わたる道路は信号のある交差点になっている。
その交差点に「かばん」を売っている店があった。
その店はいつも「かばん屋」とは限らない。
定期的に、正確にはわからないけれど、
一週間か2週間ごとに店が入れ替わる、
何ショップというのだろうか?
イベントショップ?サテライトショップ?
呼び名がわからないけれど、
とにかくその日はたまたまかばん屋だった。
・・・
「女性用のカバン、今日は全部3000円です!」
売り子をしている男性が大きな声で、
信号待ち中の歩行者に聞こえるように呼び掛けた。
「女性用のカバン、今日は全部3000円です!」
2回目に呼びかけたのとほぼ同時に、
道路を渡る歩行者用の信号が青になり全員が渡り始めた、
それとほぼ同時に、私の左うしろから
男性の声が聞こえてきた。
「今日は3000円じゃなんくて、きょうも3000円だろ」
振り返ると2人組で横断歩道を渡っている
サラリーマンのうちの一人が発した言葉だった。
・・・
「今日は3000円」とはどういう意味だろう?
「きのうは3000円ではなかった」と理解できる。
同時に、安売りを強調したいのだろうと推測すると、
きのうは今日より、もっと高かったはずと、
「推測」することができる。
でもそれは推測だから、もしきのうは
3000円でなくて2000円であっても文句は言えない。
でも常識的に考えると、きのうより高くなったものを
宣伝しても仕方ないから、
安い雰囲気を醸し出したいという匂いはプンプン漂う。
その匂いが、サラリーマンの男性に引っかかったのだろう。
「今日も3000円」なら今日特別に安いとは感じないけれど
もともととても良質なカバンを売っているなら、
それでも安いと感じるかもしれない。
真偽はわからないけれど、どちらにしても、
言葉は意思を表す。
そして、言葉は意味を表す。
たった一文字違うだけで、伝えたいことが変わる。
「結局3000円なんでしょ」といえば、
間違いではないけれど、相手の気持ち
(意思、意味)は理解できない。
気持ちを聴くということは、意味や意思を聴くということ。
言葉にこだわって聴き方を使い分ければ、
人への理解の深さと質を変えることができる。
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■傾聴の参考になる動画
心理学的な傾聴の説明をゆっくり学べます
諸富祥彦の傾聴のねっこ(動画)