駅から駐輪場に歩いて向かう途中に橋がある。
夜、帰宅するとき、毎日そこに人が立っている。
橋を越えたところにある飲み屋のポン引。
いまから帰ろうとしているのに、
「飲み、いかがですか?」
と、いつも声を書けられるのが実に鬱陶しい。
ところが、あるとき、
ある条件が整っているときだけ、
ポン引きが声をかけてこないことに気がついた。
その条件とは・・・、
「スーパーの買い物袋を持っているとき」。
ポン引きを使って、いろいろ実験してみた。
スマホを一生懸命見ながら歩いていたら
声をかけてこないのではないか?
と、思ったが、声をかけてくる。
洋服屋さんの大きな紙袋を持って歩いていても
声をかけてくる。
でも、やっぱり、スーパーの買い物袋を
持っているときだけは、絶対に声をかけてこない。
「買い物袋を持っている人は、帰る気満々で、飲み屋に誘っても来ない」。
それが彼の、カモになる客を効率的に
見つける判断基準なのだと分かった。
彼は、私のことを観察していた。
でも、その私を観察している彼のことを
私もまた、観察していた。
・・・
人と出会うということは、一方通行ではない。
誰かと出会うということは
自分と出会うということと同じ。
必ず双方向に出会っている。
たとえば、人と出会いながら、
「他人からどう見られているか?」
気になったりする。
相手の視点を通して、自分がどう見られているのか?
第三者的な自分の姿と出会うことにもなる。
また、
誰かと出会うことで、相手と自分を比較して
「この人には、あんないいところがある(私にはない)」
「この人より、自分の方が勝っている(あの人にはない)」
「そんなこと、できていいな(私はできない)」
「そんな物、持っていていんな(私は持てない)」
常に自分と比較し、
人との出会いの中で自分自身と出会っていく。
人と会話しながらいつも、
自分との共通点、相違点を比較している。
そして、会話の中で、
共通点があることを喜びすぎると、
自分の持っている情報や経験をすぐ話したくなる。
相違点が許せないと思うと、
反論したくなる。
どちらの場合も、言わずにはいられなくなる。
・・・
聴き方には確かにスキルがある。
(うなずき、あいづち、くり返し、質問・・・)
でも、聴くスキルは、
賛成でも反論でも、意見でも、
自分の心が動きすぎて、
コントロールできない状態では何の役にも立たない。
スキルは、心が整っているときにはじめて使える。
うなずき、あいづち、くり返しの練習をするのもいい。
でも、そのスキルを本当に使いこなしたいなら、
自分の心が何に対してどう動くのか?
何に対して動かないのか?
知っておいたほうがいい。
自分の心を無視したスキルは、
表面的で機械的になる。
・・・
人と出会っている最中は、
必ず自分とも出会っている。
人の話をちゃんと聴くなら、
人と出会っているときの、
自分の心の声もちゃんと聴きながらきこう。
自分の心の声が聞ければ、
他人の心の声も聴きやすくなる。
【この言葉を自分に言ってみよう!】
「人と出会い、自分と出会う」
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