一の違いが大切

細かすぎるのもよくないけれど、

おおざっぱすぎるのもよくない。

それは、人間関係についてお同じだろう。

大阪に向かおうと新幹線に乗った。

指定した席に向かったら、

すでにそこには年配の女性が座っている。

よくあるトラブル。

声をかける前に念のために、

もう一度、自分の号車と座席番号を確認。

「まちがいない」。

そう確信して、声をかけた。

「すみません。ここ私の席なんですけれども・・・」

声をかけられた女性は、あわてて

自分の切符を取り出しながらこう言った。

「いやぁ・・・、確かに、3列目のAでしたけど・・・」

そういいながら、見せられた切符を見て、

原因がはっきりと分かった。

ここは「6号車」だけれど、

女性の切符には「5号車」と書かれていた。

そのことを伝えたら、恥ずかしそうにして

そそくさと荷物をまとめて、移動していった。

・・・

せっかく予約した真新しいシートに

座れると思っていたのに、、

先に座られてしまったというのは、少し残念な気もする。

でも、まあそれは小さなこと。

座席を整えて座り、しばし

外の景色を眺めながらこう思った。

「1(いち)違うとだいぶ違うな・・・」

と。

人間の脳は、

物事を意外と正確に理解していない。

「ざっくり」と理解したがる傾向がある。

それが「よい」。

たとえば、脳があまりにも物事を正確に「しか」

理解できなかったとしたらどうなるだろう。

知人の洋服が昨日と今日で違っただけで、

脳は「別人」と認識してしまうらしい。

洋服が違っても、大体の雰囲気が同じなら

同一人物だと認識できるのは、

脳が「いいかげん」だからに他ならない。

でも、その脳の「いいかげん」な特徴は、

よい面と、悪い面を持っている。

どういう時に悪いになるかというと、

「違いをちゃんと理解しないといけないとき」。

たとえば、

今回の新幹線もそう。

「新幹線だから、どの新幹線にでも自分の都合で適当に乗ってもいいだろう」

とはならない。

「同じ、のぞみ221号だから、どこの席に座っていい」

にもならない。

「のぞみ221号の5号車『付近』だから、6号車でもいい」

にもならない。

「6号車の中だから、どこの席でもいい」

にもならない。

「6号車の3列目だから、A~Eのどの席でもいい」

にもならない。

このように、あいまいな感覚ではダメということがある。

・・・

私の席は指定席。

場所が一つに決まっている。

その人なりの決まった場所がある。

これを「個性」と呼ぶ。

また

同じ新幹線に乗っても、

座席が違えば見える席が違う。

あるいは、

まったく同じ席に座って、外を見ても、

網膜に映っている景色は同じでも、

脳が認識している景色は人それぞれ違う。

「見えている」という事実と、すべてを

「理解できてる」ことは、まったく関連性がない。

見えていても、理解できていないことが必ずある。

このことは、物と教える立場の人は

ぜひ知っておいたほうがいい。

それはともかく、

・・・

このことを、「話をきく」とに当てはめてみる。

相手を理解するように話を聞くと言うのは、まず、

なんとなく似ている状況に思えても、

まず、見えてる景色そのものが

「全く同じということはないはずだと信じて」

相手が認識している景色が何かを見ようとする。

あるいは、もう一歩進めて、

同じ景色が見えていると思っても、

きっとそれに対する

「感じ方が違うはずと信じて」

相手が感じているものと、感じていないものの

両方を知ろうとすること。

それが、相手を理解するきき方ということ。

「自分と同じ(考え、認識、思考)になったら、相手を信じる」

のではなくて、

「相手は、自分とは絶対に違うと信じる」

つまり、

相手と自分の共通点を探すような

きき方が一般的な日常会話で、

相手と自分との相違点を探し、

それを自分の世界で割り算(分析)せずに、

そのまま、相手の世界として受け入れるのが傾聴。

似ているように見える新幹線も、実は様々。

座席から見える景色も様々。

景気の感じ方も様々。

それと同じで、話をきくと一言で言っても、

きき方は一種類ではない。

きき方も様々。

おおざっぱにきく時と、

いちの違いにこだわってきく時。

自由に使い分けられるようになると、

人間関係はだんぜん楽になる。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「一の違いにこだわる」

そのためにはまず、

なにかに取り組む時に、自分自身が

100のうち1(いち)できたら喜ぶ癖をつけよう。

「99足りない・・・、98足りない・・・」

といって、

いちの違いに価値を見出だせない人は、

話を聞きながら、ざっくり適当に

きく癖がついてしまう。

そうならないためにも、まず、

自分に対するいちの変化を喜べるようになると、

傾聴も上手になっていく。

一の違いの価値が分かるようになれば、傾聴は簡単。

違いがわからずに、できない自分を

責め続けている人にとっては、

傾聴は一生難しい。

ただ、それだけの違い。

・・・

人間だから間違いは誰でもある。

でも、あの座席を間違えて座っていた女性は

きっと聴き上手ではないだろうと、想像できた。

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いちの変化に気づくきき方に

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