うれしいような、寂しいような

気持ちを理解するというのは、
単純な話しは単純に、
複雑な話しは複雑に
そのまま理解することから始まる。

・・・

会社が飯田橋に来て10年。

10年この街にいると
近所のお店もだいぶ入れ替わる。

お気に入りの店が
なくなることもあれば、
新しく増えることも。

そして、そろそろ、
新しい店が始まるようだ。

月末、近所の空き店舗に
「やよい軒開店」
(定食屋チェーン)
が開店する。

飯田橋は土日の人口が薄いから、
多くの飲食店の多くは
土日休みになる。

でも、
チェーン店は比較的
土日もやっているところが多い。

やよい軒も開けくれるだろうか?

もし、
土日休みだとしても、
平日のお客さんの昼食の
選択肢増えるだけでも
ありがたい。

私も、食べに行くだろう。

新しいお店は常に大歓迎。

でも、

今回だけは、もろ手を挙げて
喜べない自分がいた。

・・・

先ほど、
「10年いれば入れ替わる」
といった。

実はまさに、やよい軒が開店する場所こそ、
私が大のお気に入りだった
「魚の定食屋」があった場所だった。

食事は美味しいし、
店員の接客もいい、大のお気に入り。

でも、
駅から少し離れていて
夜間人口が少ない場所だから
商売するには難しい立地なのは
明らかだった。

それがわかっていたので、
なくなって欲しくないので
だいぶお客さんも連れて行ったし、
自分もよく通った。

そんな感じだから、
店の人は喜んでくれて、
店員さんの知人も増えた。

それで、7年くらい頑張っていた。

でも、ある日突然、魚屋は
看板はそのまま魚屋のまま、
運営会社が変わった。

態度が悪い店員に入れ替わった。

そして、さらに数ヶ月したら、
また運営会社が変わった。

また従業員が入れ替わった。

魚屋は魚屋のままだったけれど、
メニューがガラリと変わり、
ひどくなった。

そして、

たった2ヶ月でまた、
(お気に入りの)
元の運営会社にもどった。

接客のいい従業も
何人か戻ってきたおかげで
店に落ち着きが戻ってきたかのように見えた。

でも、それからたった1ヶ月、
店員はそのまま、
魚屋は、トンカツ屋に変わった。

トンカツはいつも食べたくはないけれど、
トンカツ屋に変わったあとも
できるだけ通うようにした。

ところが、それから
3か月くらいしたある日、
トンカツ屋はトンカツ屋のまま
店を開けなくなった。

朝も夜も、暗いままだった。

トンカツ屋は店の佇まいを残したまま
半年以上放置された。

しばらくは、
店の近くを通るたびに
「また開いていないか?」
「お知らせの張り紙でも出ていないか?」

淡い期待を持って見に行った。

でも変化はなかった。

もうあきらめていたある日、
魚屋だったトンカツ屋の入り口はふさがれ
工場の防音壁が取り付けられた。

中が見えなくなった。

それから数ヶ月した最近、
やよい軒が開店すると知った。

・・・

近くに新しい店が開店するのは、
いつでも大歓迎だ。

でも、
やよい軒の開店が決まったことは
裏を返せば、もう魚屋は
二度と戻ってこないことを意味していた。

最近、ようやくはずされた
防音壁の中から出てきた
真新しいやよい軒は、
真新しい内装が完成していた。

いつもの私なら、
新しい物を見ると、
ワクワクするはずなのに、
嬉しいけれど、ワクワクしてこない。

久しぶりに姿を見せた
元魚屋の場所を見ながら
思い浮かべることは

「魚屋の時は、あそこにカウンターがあった・・・」
「魚屋の時は、あそこが厨房だった・・・」

と、魚屋の想い出ばかり。

今はもうそれがない
寂しさを覚えた。

ワクワクした期待感より、
元あった魚屋への哀愁しかない。

・・・

新しい店はいつでも大歓迎だ。

でも今回だけは嬉しいような、
寂しいような・・・。

複雑な気持ちしかない。

・・・

こんなどうでもいいことだけれど、
複雑な私の気持ちを
わかってくれる人など
この世の中にいるのだろうか???

人に出してしまうと
ただ傷つくことになりそうな気がする。

だから、面と向かって
人に話すのは、やめよう・・・。

その代わりに、

私自身の中にいる
傾聴が少しできる
もう一人の私を呼び出した。

そして、

私自身が私自身の中にある
この複雑な気持ちの、
理解者を買って出ることにした。

自分の心を傾聴しながら、
私は自分自身に気づいていた。

やよい軒が開店したら、
迷わずできるだけ早く
行くだろう自分に。

そしてこんどは、
防音壁の外から見るだけはなく、
見慣れない真新しい店内の、

魚屋の時にお決まりだった
いつもの席に近い場所から、
こんどは10年前と変わらず見えるはずの、

魚屋から見えた、
外の景色を眺めながら
哀愁に浸ろうとするに違いない。

そして、またその時
こう感じるに違いない。

うれしいような、寂しいような・・・。

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