役立つアドバイス、役立たないアドバイス

アドバイスをするからには、相手の役に立って欲しいものだが、

せっかくのアドバイスも、役に立たないだけでなく、

害になっているアドバイスもあるのが現実のようだ。

もう3、4年前の話。

生命保険会社で人事の仕事をしている知人から、

「昔と今の新人教育のちがい」

を教えてもらった。

そこで出てきたのが

「電話の受け方研修のちがい」。

生命保険会社に限らず、

企業ではだいたい、

「電話ので出かた」というのが決まっている。

簡単な例で言うと

たとえば、最初ひとことは

「はい、株式会社●●です」

から始めるのか?

「お世話になっております・・・」

「いつもありがとうございます・・・」

なのか、社風によって異なる。

なので、電話の応対研修というのは、

自社の文言通りに受ける練習を

徹底的にやったりする。

・・・それが「昔」の話。

しかし、最近(といっても数年前だが)はどうかというと、

「受話を受ける練習」

から始めないといけないのだそうだ。

なぜなら、固定電話を

使った経験が乏しい人が多いから。

電話の操作方法くらいなら、

受話器を持ち上げるだけだから簡単。

問題は、知らない人から電話を受けたり、

かけたりする経験が携帯世代の人たちは極端に少ない。

最近の人たちは、要件の多くは

電話ではなくメールやラインを使う。

知らない人から、自分の携帯に

電話がかかってきたらそれは

ほぼ間違い電話で「事故」のようなもの。

だから、会社独自の言い回しを

身に着ける以前の問題として、

知らない人と電話をやり取りに

慣れさせないといけないのだそうだ。

そして、知人いわく、

電話研修をやった翌日に、

「この仕事向いてないので辞めます」

と、練習を始めたばかりなのに

辞めてしまった人もいるのだとか・・・。

最近の若者は情けない。

そんな想いがわいてきて驚いて一瞬、言葉を失った。

・・・

話は変わるが、最近のこと。

あるお願い事があって、直接面識がない人に

電話をかけようとおもった。

仕事の用件をたすためや

お店に注文関連の電話ではなく、

あくまで個人的なお願いごとのための電話。

電話かけようとした時、

一瞬、躊躇している自分がいることに気がついた。

考えてみると、最近、個人的な用事で

電話をかけたことがない。

ほとんどメール。

電話をかける習慣が、乏しくなっていた。

そのとき、さきほどの保険会社の知人の

あの話がふと脳裏に蘇ってきた。

私はまだ携帯普及前の世界を知っている

にもかかわらずこのありさま。

「私の方が、重症かも」

と思った。

・・・

高校時代は、彼女の家によく電話をした。

そのときは、心の中でいつも

「どうか、お父さんが受話器をとりませんように!」

と祈りながら電話した口だ

(そして、お父さんがよく出た(汗))

そんな電話をかけた経験が豊富(?)な私でも、

しばらく遠ざかると、躊躇するくらい。

ならば経験したことない若者が

電話できないのは無理もない。

「人間、経験が乏しいことは出来ないものだ」

と思った。

するとその流れから、

「他人」がする「アドバイス的」な「昔話」ほど

無意味なものはないように思えてきた。


・経験談をいくら聞かされても、それで出来るようにはならい。

・人の能力は、教えてもらったから伸びるのではなく、緊張や不安を抱えながら経験をして初めて伸びる。

・昔の常識の多くは、いまは通用しない。

これは電話についてだけでなく、

アドバイスの有効性にも通じる。

でも、そういうとこう反論が返ってきそうだ。

「でも、経験からのアドバイスが役に立つこともありますよね!?」。

そういう人には、逆の質問をしたい。

「でも、経験からのアドバイスが役に立たないこともありますよね!?」。

と。

その質問にどう答えるだろうか?

「役に立つことがあれば、言ってあげたほうがいいんじゃないですか!」

と返ってくるだろうか。

では、逆に訊きたい。

役に立たないだけでなく、

的外れなアドバイスに付き合わされて

苦痛に感じている人がいたらどうするのだろうか?

あるいは、

余計なアドバイスをすることで、

先に知ってしまったがために、自分で決断し

能力を身につける機会をそがれている人が

いたとしたらどうするのだろうか?

「ときどき役に立つ」からといって、

いつもしてあげるのがいいといえない。

役に立たないときが、無害とも限らない。

・・・

かくいう私は、アドバイス自体は実は否定しない。

でも、アドバイスするなら必ず、

「いま、目の前の人」

に未来のイメージが見えているか確認しながら

アドバイスをするようにしている。

自分の過去を思い出し、自分しか見えない

イメージを見てするようなアドバイスは

たいてい役に立たない。

自慢話に聞こえる。

アドバイスするなら、自分ではなく、

「相手に」何が見えているか

確認しながら進むのがいい。

押しつけになるアドバイスと、

役に立つアドバイスの違い。

それは、

自分に見えた過去の映像をもとに、

ただ伝えるだけが前者。

相手に見えている映像を

確認しながら伝えるのが後者。

そして、

相手に何が見えているのか?

丁寧に確認しながら話を聴くことを

「相手の話をよく聴く」

という。

相手の世界をよく理解できているからこそ、

相手にとって必要なアドバイスができる。

たった自分一人の経験で割り算できるほど、

他人の問題はシンプルにできていない。

【この言葉を自分に言ってみよう!】

「相手の世界を観に行く」

電話をかけるのを躊躇している

自分に気付いたことで、

若者の気持ちも少し理解できたような気がした。

「出来ない自分に気付く」。

その経験も、成長に役立ちますね。

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