（京都から帰りの新幹線の中で、これを書いています）
生まれて初めて心の声を聴けたのは、京都の祖母の葬式の翌日でした。

葬式が終わったのが夕方だったので、
無理して帰らず、京都駅前の
ホテル泊まりました。

客室から京都タワーが
綺麗に見える部屋でした。

私のいた部屋から、ちょうど京都タワーが
串刺ししているように、真上に
満月が見えていて、少し気味が悪かったのを
今でも覚えています。

そして、

翌日は、人生の転機となりました。

・・・

話は変わりますが、

10年お世話になってる傾聴の師匠は、
大昔、奈良で内観療法を行っている
吉本伊信先生のところに内観をしに行った帰り、
京都駅の新幹線改札を通る時に「宇宙」を見たのだそうです。

それが由縁で、師匠はカウンセリングルームの名前を
コスモスにしたのだそうです。

それを聞いて私も宇宙を見たくて、
奈良に1週間の内観研修に行きました。
（吉本先生はもういらっしゃらないので、三木先生のところに）

でも帰りの新幹線の改札をくぐる時、
期待していた宇宙を見ることができず、がっかりしました。

それから数年、もうそんなことは
忘れてしまっていたのに、いま思えば
やはり新幹線が人生の転機になっていたのでした。

当時、私はものすごく悩んでいました。

・・・傾聴について。

もう5年以上、傾聴一筋でやっているのに、
ぜんぜんお金を稼げる、ビジネスになりません。

会社から給料はもらっているけれど、
35歳も過ぎてるのにこれでいいのかな？と。

転職も2回していたので、もとに戻ることも、
先にも行くこともできず、日々悶々としていました。

もう昔のことなので暴露してしまいますが、
当時、年間の売上が40万しかありませんでした。

アルバイトした方が儲かる状況です。

小さい娘がいて、どうしようか、と。

そんな日々悩んでいた時期の
祖母の葬式だったのです。

なので正直、宇治に行ったということ以外、
悲しみもないどころか、
葬式のことは、すべて記憶にありません。

・聞けない自分はダメだ
・どうにもならない
・なんで転職なんかしたんだ

責める言葉はつきません。

帰りの新幹線でもそんなことを考えたり、
考えなかったりをくり返していたら
いつの間にか車内に音楽が流れ、
降りなきゃいけない新横浜に近づいたサインが。

「降りる準備をしなきゃ」

と、ふと我に返った瞬間、
あの運命を変えた出来事が起きたのでした。

「聴けなくても、生きてるからいいじゃない」。

その何の前触れもなく聞こえてきた
突飛な言葉に周り見渡しましたが、もちろん誰もいません。

でも確かに、

「聴けなくても、生きてるからいいじゃない」。

と聞こえたのです。

でも、その声が男性なのか？女性なのか？
聴かれても正直応えられませんが・・・。

本当はきっと私の中の潜在意識が
作り出しただの幻だったのでしょう。

でもなぜかその言葉を聞いた私の目からは、
悲しくもないのに涙が流れて
止まらなくなっていたのでした。

それが私が生まれて初めて、ハッキリと
自分の心の声をちゃんと聴けた瞬間でした。

あれが自分にとっての宇宙だったなんて
その時は思いませんでした。

でもあれから何年もたった今、
たしかにあの日から
「聴けなくてもいい」
「聴けなくても私の人としての価値は変わらない」
そういう思いがどんどん強まってきたのは事実です。

そして、いままでのガチガチの
見せかけカウンセラー様だった私の肩から
力がすっかり抜けて、自分が困らない程度に
聴けるようになりました。

仕事としての傾聴も急成長をして、
順調とはいえないまでも
生活できるくらいまでは
まわりはじめてくれました。

なぜか止まらない涙を隠しつつ、
新横浜に降り立ったわたしは
あれから8年たって京都に
仕事で来れるまでになりました。

いま京都で傾聴の仕事の帰りの電車内です。

今晩、京都タワーの上に見えた月は
満月ではありませんでした。

そういえば祖母の葬式も5月でした。

すべては偶然と思えば偶然、
でも、奇跡と思えば奇跡。

どちらでも、もう構いません。

8年前のあの日、悩みすぎていた私が
確かに京都にいたし、8年後の今日、
傾聴を仕事としている私が京都にいる。

その事実だけで十分なのですから。

とりあえず多分、
悩んでいた私に気がついていたはずの
天国の祖母に感謝しておきましょう。

その方が気分がいいので、
気分がいいように解釈します。

タイトルは「凱旋」としましたが、
凱旋とは、もともと戦いに勝って戻ってくることだそうです。

私は戦いに勝ったのでしょうか？

自分を受け入れられただけです。

でもそれもある意味、何かへの
勝利なのかも知れませんね。

これをお読みいただいているあなたは、
自分を受け入れるという形の勝利を
手に入れたことがありますか？

誰から何と言われようと、
傾聴は聴く人が楽になるもの。

その確信が揺るがないのは、
そういうわけです。

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諸富祥彦の傾聴のねっこ（動画）

　※岩松の個人的な趣味です
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